言霊の華 第543号を配信しました

言霊の華 第五四三号

『美しい自然は美しい神々の姿』

私がまだ四、五才の頃、家族で摩周湖に行った時のこと、一刻一刻と湖面の色が変化していく情景を見て、あまりにもの美しさに金縛り状態に陥ってしまいました。

家族が私の名を呼んでも身体が動きません。その内、兄だったか会社の若い衆だったかが、幼い私の襟首を掴んで鉄柵(てっさく)から離したのです。

その感動と衝撃は今でも忘れません。何か得体の知れない、何モノかを見て感じてしまったのです。湖の対岸に大きく口を開け、聳(そび)え立つ摩周岳。湖面に浮かぶ小島。この感動体験を元に小学校一年の時に書いた詩「神秘の摩周湖」が金賞に選ばれました。

私の美に対するレセプター(鋳型・受容体)はこの摩周湖体験によって生まれたものです。限りなく美を求めてやまない心は、その後も人生を通じて失うことはありませんでした。

幼い時の原体験はその人の人格形成や、人生を決定してしまう程重要です。幼い時、できるだけ美しいものに触れさせる。美しい物語や美しい音楽、偉人伝もそうです。それは子どもたちのレセプター作りのため必須なのです。

美のレセプターができた人はレセプターに合った生き方を求め始め、美しくないことをしたくないと避けようとします。その後の私は遂に三〇代になってから自然崇拝である古神道に目覚め、お山登拜や禊を始めるようになったのでした。私のレセプターがそうさせたのです。

今月20日から23日まで、三泊四日をかけて我々有志九名が山形県にある、出羽三山、鳥海山登拜を斎行しました。天氣予報では全日程が雨とのこと。雨の中では鳥海山(標高2,236m)の登拜は無理です。中止の場合どうするかと代替案が色々と出されましたが、結局「兎に角行くだけ行ってみよう」と云うことになったのです。

それは前日に出された結論でした。ところが当日の早朝外に出てみると、なんときれいな青空が広がっているではありませんか。往復十三時間をかけた登拜を見事有志たちは成し遂げたのです。

堀内明日香女史は赤い鼻緒をつけた浴衣用の草履を履いたまま頂上に一番乗りでした。行き交う人々皆がその出立(いでたち)にびっくりし、一躍人氣者です。過去鳥海山に草履で登拜した人は堀内明日香女史が初めてだったに違いありません。

私は二十五年前、鳥海山に初めて登りました。あまりにもその美しさに魅了されたのです。今回も登拜の途中、何度も拍手(かしわで)を打ち鳴らし、祈り、拜み、鳥海山の神を讃え続けたのです。

そして真の底から思ったことは「日本人に生まれてきて本当に良かった」ということです。何故なら美しい自然を拜(おが)むと云うことは、美しい神々を拜むことに他ならないからです。自然は即、神そのもの。

しかし欧米やイスラム世界はこうはいきません。父なる神は厳しい自然である砂漠やステップから生じ、「美しい」よりも「厳しい」が強いからです。

日本の神々は「美しいし優しい」のです。花に神を観る日本人の感性こそ、日本人が一番大切にしなければならない宇宙の宝と思えてなりません。

合掌 かむながらありがとうございます

菅家 一比古

 

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